私たちは、人事分野におけるテクノロジー活用やデータの分析結果を経営に活かすことを推進する団体です。

2018年5月29日に開催された『HR Technology Venture Night #1 ~ピッチイベント&ビジネス交流会~』の様子をレポートします。AI/人工知能の最新事情やHRテクノロジーの市場動向、革新的なHRテクノロジー関連サービスについて、業界の最先端を走る企業の代表者を招いてお話いただきました。

 

【HRテクノロジーとAIの融合が切り拓く未来予想図】
エクサウィザーズ石山代表取締役

■労働市場と教育のつなげ方
石山氏「1つの仕事に対して10個のタスクが紐づいているとすれば、 AIが対応できるのは10個中の8個程度。これまで10個できなければ就けなかった仕事に2個できれば就けると考えると、AIによって雇用機会が創出されるともいえます。残りの2個のスキルをいかにJust in Time Educationするかという議論が、世界中の研究者によってされている状況です。具体的には”働くということを科学して、社会課題を解消していく”ことが行われはじめています。」

■テクノロジーで介護職のミスマッチを解決へ
石山氏「労働市場で最もミスマッチが多く、人材不足が叫ばれているのが介護職です。介護業界の最大の問題は、”良い介護とは何か”が明確化されていなかったこと。ディープラーニングの技術がようやく進化してきたため、介護中の動画をAIで解析することによって、被介護者のリアクションや医学上の統計における効果が計測可能となりました。収集したデータを基にした特定のトレーニングを行うことで介護者の負担が減少し、さらにはスタッフの離職率も改善することが証明されています。」

■人事のパラダイム
・人事1.0:人事が人事の業務にAIを導入していない状態
・人事2.0:人事が人事の業務にAIを導入している状態
・人事3.0:人事が”人事以外の業務”を含めて全社的にAI導入を牽引している状態

石山氏「日本の労働人口が減少していく中で、AIをいかに活用してイノベーションを生むか。今後2〜3年以内に本気で考えなければならない時代がやってくるでしょう。人事の世界では、これまで2.0ですらままならない状態の企業が多くありました。しかしHRテクノロジーの盛り上がりにより、間もなく3.0の状態に値する企業が登場してくるはずです。」

[第一部] 株式会社Emotion Tech 今西代表

今西氏「当社は、企業の収益改善や経営改善を、顧客や従業員のエンゲージメントに関するデータを使いながら改善をする支援をしている会社です。人事向けのソリューションとしては、『Employee Tech』というサービスを提供しています。」

■従業員エンゲージメントを高める効果
今西氏「私たちは、上司や同僚との関係性や会社の評価制度、労働時間など、職場での様々な体験を元にした従業員と企業の関係性の相場を”従業員エンゲージメント”だと捉えています。そしてこれを改善していくと、従業員にとっても企業にとってもプラスの効果を見込めるといえます。 というのも、従業員のエンゲージメントを改善したら企業の収益も向上した、という事例が多数発生しているのです。」

■eNPS(=Employee Net Promoter Score)とは
今西氏「当社の最大の特徴は、eNPSという指標の取扱いに関する知見があることです。NPS(=Net Promoter Score)という企業やブランドに対する顧客エンゲージメントを数値化する指標がありますが、eNPSは従業員エンゲージメントを数値化する指標です。アメリカでは非常に多くの企業がNPSおよびeNPSを、組織コンディションを計測する重要なKPIとして導入しており、近年は日本でも導入する企業が増加傾向にあります。」

■eNPSを高めることが会社の成長につながる
eNPSは、”自社への入社を、あなたは友人・知人に薦めますか?”という質問一つに対して10点満点で回答いただくだけで計測が可能です。」

・0〜6点:批判者
・7〜8点:中立者
・9〜10点:推奨者

★eNPS=推奨者の割合(%)−批判者の割合(%)
今西氏「eNPSは非常にシンプルな概念でありながら、この数値改善によるインパクトは絶大です。すなわち、会社の業績を向上させるためには従業員エンゲージメントの改善が最も効果的なのです。」

[第二部] 株式会社scouty co-founder   二井 雄大 氏

二井氏「当社は”世の中のミスマッチをなくす”をミッションに、採用に特化したサービスを運営しています。 現在はエンジニア採用をメインに行っていますが、ゆくゆくはデザイナーやセールスなど他職種の採用サポートも構想に入れています。」

■エンジニア採用は難易度が高い
二井氏「エンジニアの求人倍率は、8.14倍にまで膨れ上がっています。そうした中で、3年以内に転職をするエンジニアの数は約7割。エンジニア採用の難易度が急速に高まりつつある中、転職活動中や転職潜在層の方へ効果的なアプローチをしていくことが求められています。そこで当社は、AIを活用したマッチングで企業の採用をサポートしています。」

■scoutyが使用している4つの技術

(1)企業と人をつなぐマッチングの技術
二井氏「AIを活用してオープンデータからスキルや思考性を解析。企業の採用要件に合いそうな人をレコメンドします。」

(2)退職するタイミングを予測する技術
二井氏「実際に転職をした人の、転職前の行動を解析しています。転職をする3ヶ月前に表れる変化などから、退職のタイミングを予測します。」

(3)インターネットから情報を収集するクローリングの技術
二井氏「ツイッターやブログ、Githubなどオープンにされているデータを収集。それぞれが同一人物のデータであるということをシステム上で判断をしています。」

(4)スカウトメールに関するサポート技術
二井氏「これまでは、人事担当者がテンプレートをコピペしてスカウトメールを送信するだけで、返信率の低さが大きな課題でした。そこで当社は、人物の経歴等にフィットするメール文案を最適化してレコメンドし、平均水準以上の返信率を担保しています。」

[第三部]シングラー株式会社 熊谷代表

熊谷氏「当社は、競り負けない採用を実現する人材分析サービス『HRアナリスト』を運営しています。採用が強い企業には、2つのパターンがあります。
1つは、“応募者目線”
→応募者が「ぜひ入社したい!」と思ってもらえる採用上の自社の強み/訴求ポイントを、採用担当者がきちんと理解できていること。
2つには、“企業目線”
→採用担当者が応募者の人となりを理解し、その人に合わせたコミュニケーションを取ることができることで、効果的な採用ができていることです。

たとえ採用予算や知名度があっても、上記の2つを採用担当者が具現化できていない企業の採用はあまりうまくいきません。」

■『HRアナリスト』はCX(=Candidate Experience:応募者体験)を改善する
熊谷氏「内定者が採用目標に満たない場合のアプローチとして、一般的には母集団を増やすという解決法が行われています。それとは異なり、母集団は同様のままでも離脱率を改善すれば採用目標を達成できる、というのが当社の考え方です。これを実現するために、CXを改善することに着目しました。」

■『HRアナリスト』の活用の流れ

応募者に対して面接の前にメールを送り、独自開発した“プレ・アンケート”を実施
スマートフォンで直感的かつ簡単に操作可能で、所要時間は10分程度。これにより、応募者のニーズや意思決定ポイント、思考性をヒアリングできます。

人事側に結果が届く
プレ・アンケートの内容をAIが分析し、他社に競り勝つ採用方法を提案します。具体的には、応募者の思考や行動の特性に対する理解を深め、面談・面接のシミュレーションができるようになります。

応募者に合わせたリクルーター・面接官を提案
応募者の特性に合わせて、アサインすべきリクルーター・面接官を提案します。

応募者の志望度を上げるテーマを表示
面談・面接の方針や、リクルーター・面接官がとるべき具体的なアクションなど、パーソナライズされた採用戦術を提案します。

■応募者の特性がたったの10分で明確化
熊谷氏「『HRアナリスト』は人事向けではなく、あくまでも現場面接官向けのサービスです。そして、適性検査ではありません。”目の前にいる応募者とどうすれば良いコミュニケーションを図れるか”、といった部分に特化したサービスです。これまで応募者の特性を理解しようとして面接に約1時間かかっていたところが、たったの10分のプリアンケートで把握可能に。分析結果のURLは現場面接官への指示書としてそのまま活用できるため、人事の方の負担も軽減にもつながります。」

 


「働き方改革」が追い風となり、次々とサービスが登場しているHRテクノロジー業界。革新的なサービスに関するピッチに、経営者、人事の方々も興味津々の様子でした。これから労働人口の減少が加速していく日本では、ますます人材の価値が高まります。当たり前ですが、優秀な人材なくして企業の発展は見込めません。経営視点から組織人事上の重要課題を明確にし、中長期的な視点で業績向上やコスト削減につながるサービスを活用していく積極的な姿勢が求められそうです。